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執筆者の写真狭山茶農家 ささら屋

緑茶に紅茶にウーロン茶。何が違うの?



日本に住む私たちにとって、非常になじみの深いお茶。

ご飯のおともに普段使いの番茶を楽しみ、3時のおやつにはちょっと贅沢な上級煎茶や和紅茶を味わう。そして、夜寝る前にはカフェイン控えめの温かいほうじ茶で心を落ち着かせてゆったりと眠りにつく。


最近は、そのようにシーンにあわせて日本茶を楽しむ方も増えてきていると聞きます。

(1お茶農家のとして、とても嬉しく思います!)


他方、緑茶や紅茶、ウーロン茶がどのように作られているのかは、知られていないことも多いようです。

そこで今回は、緑茶、紅茶、ウーロン茶、そしてほうじ茶と、それぞれのお茶がどう作られているのかについて、簡単にご紹介したいと思います。

奥深い「お茶の種類」の世界。

ぜひ、その世界への最初の第一歩を踏み出して下さいね。







1.そもそも、緑茶と紅茶とウーロン茶、何が違うの?

言わずもがなですが、これら3種類のお茶、色はもちろん、味も香りもまるで全く別ものであるように感じられるかと思います。

それぞれがそれぞれの魅力を持っており、飲みたくなるシーンもバラバラ。

多くの方が、「そもそも葉っぱの種類が違う」と思ってしまうのも無理からぬことです。


しかしながら、実はこれらのお茶の違いは茶葉の種類によるものではありません


その違いは、主として茶葉の加工に至る前の『発酵度合いの違い』に起因します。

茶葉は自身の中に酵素を持っており、摘み採られた瞬間から自らの酵素で発酵を始めます。お茶を作る際には、熱を加えることによってこの酵素の働きを止めるのですが※、その発酵の度合いに応じて、大まかに下記の通りにお茶の種類が変わります(中国茶などはもっと厳密に分けられます)。


①極力、茶葉が発酵しない内に酵素を失活させる :緑茶(不発酵茶)

②加工前にある程度茶葉を発酵させる :ウーロン茶(半発酵茶)

③加工前に十分に発酵させる :紅茶(発酵茶)


このように、同じ品種の茶葉でも、加工前にどこまで発酵を促すかによって、お茶の種類が変わるのです。


※この酵素の働きを加熱で止めることを殺青(さっせい)と言います。

その加熱の方法が、できあがるお茶の特徴にも影響します。




2.各お茶の加工工程

それでは、具体的に各お茶の加工工程にはどのような違いがあるのでしょうか。

私どもも全てのお茶を作っているわけではないので、一部勉強した内容のお伝えになりますが、おおまかには下記の通りとなります。



■緑茶の加工工程 ※蒸し製煎茶法の場合


緑茶

前述の通り、緑茶は不発酵茶。酵素をできるかぎり早く失活させ、失活させてから揉捻、そして、乾燥の工程に入ります。

現代の日本茶の製造において主流となっている蒸し製煎茶法の場合、その工程は下記の通りになります。

<簡単に言うと…>

①蒸熱:蒸気の熱で、酵素の働きを失わせる。殺青(さっせい)工程。

②粗柔:水分を均一に飛ばすため、熱風の中で攪拌しながら揉む工程。

③揉捻:茎や硬い葉など、乾燥しにくい部分の水分を押し出す工程。

④中柔:茶葉に熱風を当てながら揉み乾燥、葉をよって細くする工程。

⑤精柔:さらに乾燥させながら、針状に形を整える工程。




■紅茶の加工工程 ※オーソドックススタイルの場合


和紅茶

紅茶は、加工前に十分に発酵させて作る発酵茶です。酵素を十分に働かせるため、緑茶とは異なり、萎凋させて揉み込み、最後の乾燥工程で水分を飛ばしていきます。

紅茶の加工方法はオーソドックス製法、アン・オーソドックス製法、その2つの方法を併せたセミ・オーソドックス製法の大きく3つの加工方法があるそうですが、ささら屋ではオーソドックス製法をベースに和紅茶の製造を行っています。

他の加工方法を含めて詳しくはまたどこかで記述していきたいと思います(すぐに詳細を知りたい場合、参考出典をご覧ください)。

<簡単に言うと…>

①萎凋:揉捻工程をやりやすくするため、摘み取った生葉を萎凋棚で均一にしおれさせ、約半分の水分を平均的に取り除く工程

②揉捻:茶葉の細胞組織を壊し、葉の中の酸化酵素などの成分を絞り出して酸化発酵を促す工程。茶葉をより、形を整える目的もある

③玉解き:揉捻工程で塊になった茶葉をほどき、空気に均一に触れるようにして酸化発酵を促進する工程。茶葉をサイズごとに振るい分け、大きすぎる茶葉は再度揉捻工程に戻す

④発酵:酸化発酵を促すため、茶葉を薄く広げて放置する工程

⑤乾燥:乾燥機に入れ、高温熱風で酸化酵素の働きを止め、水分3~5%まで乾燥させる工程




■ウーロン茶の加工工程


烏龍茶

ウーロン茶は、ある程度茶葉を発酵させて作る半発酵茶です。

産地や種類によって加工工程にも違いがあるそうですが、大まかには萎凋工程を経て発酵、釜炒りで殺青して揉捻、乾燥を行います。

ささら屋では烏龍茶は製造していないため、下記概要のみ記載させて頂きます。烏龍茶もいつかは製造し、またどこかで詳述していきたいと思います(すぐに詳細を知りたい場合、参考出典をご覧ください)。


<簡単に言うと…>

①日干萎凋:天日にさらして萎凋させる工程

②室内萎凋:天日萎凋で生じた熱を冷まし、萎凋・発酵をさらに進める工程

③回転発酵:葉の周辺をこすり合わせて、傷をつけることによって発酵を促進させる工程

④炒り葉:主に釜で発酵した茶葉を炒り、酵素を失活させる工程

⑤揉捻:茶葉の水分を均一にし、成分が出やすくする工程。

⑥締め揉み:布の中に茶葉を入れ、転がすようにしぼりながら茶葉を締め、形を整える工程

⑦玉解き:塊になった茶葉を手でほぐす工程

⑧乾燥:熱風を当て、茶葉をかわかす工程



3.ほうじ茶ってどんなお茶?
茎ほうじ茶

ここまでご説明してきて、「あれ、じゃあほうじ茶ってどうやって作られているの?」と思った方もいらっしゃるかと思います。

ほうじ茶は、主に緑茶を製造したのち、その茶葉に焙じ香(ほうじこう)※がつくまで熱を加えたお茶を言います。ほうじ茶特有の茶色い水色と香ばしい優しい香り、あまみのあるすっきりと飲みやすい味わいは、この最後の加熱工程によって生じるもので、茶葉の品種等は問いません。

ただ、ほうじ茶は相対的に香りの弱い出物茶や番茶、古くなった茶葉を用いて作られることが多くなります。

そのため、上級煎茶等に比べるとリーズナブルなことが多いのも特徴です。もちろん、加賀棒茶のように茎ほうじ茶で上級なものもあるので一概には言えませんが、普段使いでゴクゴクと楽しめるのもほうじ茶の魅力なわけです。

因みに、ご家庭の緑茶葉が古くなってしまった際は、フライパンで緑茶葉を軽く乾煎りしてもらえればほうじ茶を作ることができますので、ぜひ試してみてくださいね。



※焙じ香:お茶葉を加熱すると、香ばしい香りを司るピラジンという成分が生成されます。このピラジンに起因し、どこかほっとするような、懐かしさを感じるほうじ茶の香りを指して、焙じ香と言います。





4.狭山茶農家 ささら屋の緑茶、紅茶、ほうじ茶のご紹介

最後はちょっとお商売、弊農園で育て、皆さまにお届けしている各お茶をご紹介させて頂きます。


①上級煎茶(いぶき、のどか、さくや)

ささら屋の緑茶シリーズから、ベーシックな3種類の緑茶葉です。




にわとりマークの『いぶき』はさやまかおり品種のシングルオリジン。

朝、目が覚めるような苦みと個性的な香りの強さが特徴です。






ひばりマークの『のどか』はやぶきた品種のシングルオリジン。

お昼、みんなでご飯を食べる時にぴったりの日本茶らしい味わいが特徴です。









ふくろうマークの『さくや』はやぶきた×さやまかおりの合組です。

夜、寝る前でも心を落ち着けてくれる、あまみ・うまみの強い味わいが特徴です。










②和紅茶(かえで)


つばめマークの『かえで』は、上記『いぶき』と全く同じ畑で採れるさやまかおり品種の一茶半を発酵させて作った和紅茶です。

ふわっと立ち上る香りと、すっきりとした甘みとあと味のよい飲みやすさが特徴で、ティータイムにぴったりの和紅茶です。







③ほうじ茶(ほのか)


すずめマークの『ほのか』は、一番茶の製造過程で生じる茎茶を浅く焙じて作った茎ほうじ茶です。

茎茶本来のクセのないすっきりした風味を残しつつ、しっかりとほうじ茶の香り、甘みが感じられるのが特徴です。








さぁ、いかがでしたでしょうか。

緑茶、紅茶(和紅茶)、ウーロン茶、そしてほうじ茶の違いを少しでも楽しみながらご理解いただけたなら嬉しい限りです。


緑茶ももちろんですが、発酵茶はその発酵の度合いによってかなり風味が変わるのも面白いところ。

ぜひ、それぞれ色々な農家さんのお茶を飲み比べ、その違いも楽しんでみてくださいね。


心安らぐひとときを 一杯の日本茶とともに。


それでは、また。



※出典参考

・日本茶のすべてがわかる本(農山漁村文化協会出版 2020年3月5日第13版)

・お茶百科(http://www.ocha.tv/




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